『モデルのない道 ── 海を越える橋 Ⅱ 西湘地域から』 井出尼理出亜の小説

『モデルのない道 ── 海を越える橋 Ⅱ 西湘地域から』 井出尼理出亜の小説 夕方の光が、小田原の街をやわらかく包んでいた。 海からの風は、少し冷たく、 でもどこか、背中を押すようだった。 「ここにしよう」 理出亜が立ち止まる。 古い建物。 かつては店舗だった場所。 今は、半分空いている。 「ここで?」 あなたは聞く。 彼女はうなずく。 …

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『モデルのない道 ── 海を越える橋 小田原へ 井枝尼理出亜の小説』

小説 『モデルのない道 ── 海を越える橋 小田原へ 井枝尼理出亜の小説』 朝の電車は、まだ少し冷たかった。 鎌倉駅のホーム。 海の気配を残した風が、頬をかすめる。 あなたは、電車に乗り込んだ。 行き先は、小田原。 車窓に、風景が流れていく。 大船。藤沢。茅ヶ崎。平塚。 都市と、生活と、歴史が重なりながら、 少しずつ色を変えていく。 「見える…

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『モデルのない道 ── 線のあいだで触れる光』 井枝尼理出亜の小説、

『モデルのない道 ── 線のあいだで触れる光』 夜のアトリエは、静かだった。 石膏像の白が、淡い光を受けて浮かび上がる。 窓の外では、風が木々を揺らしていた。 井枝尼 理出亜は、木の椅子に座っていた。 その前に、一人の学生が立っている。 まだ若い。 線はぎこちなく、しかしどこかまっすぐだった。 「……うまく描けません」 彼はそう言って、スケッチブック…

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